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コース改造設計のオピニオン・プラザ
月刊ゴルフマネジメント Architect's Corner  2014 Jul. 協力:一季出版(株)
第13回房総カントリークラブ東コースの巻
 

原設計/ 各務鉚二
改造設計/ 海津康志

房総カントリークラブは昭和50年(1975年)に開場した。房総半島中央部の丘陵地に東西36ホールと大上ゴルフ場(富沢廣親設計)18ホールを擁する大型クラブ。メインの東コースは平成19年(2007年)1月から8カ月をかけて高麗とベントのツー・グリーンからベント・ワン・グリーンへの改造工事を実施した。改造設計はJSGCA海津康志副理事長。
「コース改造設計とは音楽でいえば、原曲を編曲するようなもの。オリジナルを壊さず、現代に対応したモノに造りかえる作業。コスト面を考慮して、ツー・グリーンのワン・グリーン化は営業しながらの改造工事になりました」という。つまり、高麗芝のグリーンを撤去し、メインのベント・グリーンを中央に寄せ、反対側を削るという工事になった。具体的には平均550平方メートルの原形を中央寄りに250平方メートル程度拡張して、反対側を100平方メートル程度削るというもの。その結果、現在では平均750平方メートルのニュー・グリーンに仕上がっている。
その結果、ニュー・グリーンはホールの中央にある景観が現れ、高麗グリーンの跡地にはバンカーやハロー(窪地)を置き、植栽で自然に見せる努力を必要としただろう。総ヤーデージもティの部分的延長で130ヤード伸び、7,107ヤードになった。これには「原形のベント・グリーンを出来るだけ活かし、いかに戦略性あるグリーンに仕上げるかがカギだった」と海津は語る。
約40年前のオリジナル設計を手掛けたのは各務鉚二。海津がゴルフ場建設を30年以上に渡って学んだ大日本土木の先輩だった。同じゼネコン出身の先輩・後輩の関係だっただけに、設計のニュアンスを知る間柄だったろう。ニュー・グリーン完成後、メンバーやビジターの反応も良好で、年間4万5,000人の入場者数はすぐに回復し、増加傾向にあるという。

営業しながらグリーンの部分改造

以下、海津に一問一答をお願いした。

……営業しながらのグリーン改造に困難はありませんか?

海津 ホール数の多いクラブなので、プレーヤーには一部負担をかけたかも知れないが、問題なく工事は終えました。メイン・グリーンの部分的工事なので、簡単な防御ネットを張っただけで十分工事は可能でした。原形のグリーンが500〜600平方メートルの広さがあったから可能なのです。問題はニュー・グリーンをいかにホールのセンターに置くように見せるか?がカギで、どの方向に拡張するか、どのように削るか?で工夫しました。

……全体の勾配は?

海津 私の設計したコースではちょっと厳しいアンジュレーションでも2.5〜3%以内に抑えるものが多かった。ここでは2%以下にしました。石坂GCや東建多度CCよりも勾配は少ないはずです。(平均750平方メートルというグリーン・サイズは1930年代の米国に誕生した名コース、オーガスタナショナルGCの860平方メートルに迫る大きさ。ロスト・ボール探しの焦燥感を無くすためにラフを伸ばさず、ボギー・プレーには易しく、パー以下のスコアを目指すには難しい(easy bogey&tough par)をモットーに設計されたマスターズ・トーナメントの舞台はそれがメイン・テーマだった。“より多くのプレーヤーにより多くの愉しみを提供するデザイン思想”である)

……コースにはプレーが山場を迎えるところに名物ホールが必要でしょうね。

海津 ここ東コースではそれが12番(540ヤード・パー5)と13番(379ヤード・パー4)の2ホールでしょう。
まず、12番ホールの2グリーン周辺が広い敷地だったので、左奥のベント・グリーンを改修し、右の高麗グリーンを撤去してアプローチ・エリアにしました。第2IP付近からグリーンへの入口が2本のフェアウェイになる2ウェイにしたのです。2グリーン時代にグリーンをセパレートしていた雑木林を垂直なハザードとして少し残し、メイン・グリーン前には5個の花弁型バンカー群を置きました。右からの迂回ルートには数本の樹木を避ける必要がある。攻め方にバラエティを持たせる設計です。パー5ホールの第3打をどこからどう打つかという選択肢を持たせたのです。
もう一つの13番ホールは“距離の短いパー4ホール”の典型にしたいと考え、グリーン右手前(元の高麗グリーン跡地)に池を掘りました。距離は短いけれどちょっと捻ったレイアウトにしたかったのです。

……「“ショート・パー4ホール”は18ホール中に2〜3ホールは必要だ」とマッケンジー博士は云っています。ここの13番ホールも池の配置でグリーンを望む風景が締まった形になりましたね。

海津 池や川、バンカーなどは自然のハザードですから、人工的な印象はないはずです。右手前の高麗グリーン跡地をどう植栽で処理しても間延びした印象を与えがちでしょうが、池ならば明確なアプローチ・ショットを要求出来ます。グリーンを望む景観が締まったのは池のお蔭でしょう。

…… 18ホール中の山場、俗にいう“アーメン・コーナー”(プレーヤーが祈りたくなる難所の意味)も大事ですが、フィニッシュに近い上がり3ホールもドラマ上に大切では?

海津 そこは建設会社時代の先輩だった各務氏だけにパー3・4・5の3ホールは見事です。特に最終18番にはフェアウェイを横切るクリークを走らせ、攻め方にバラエティを持たせています。彼は上田治氏の設計コースでの仕事が多かったので、グリーンやバンカーの形に上田式というような男性的な造形が残っています。
ただ、この18番グリーンへはやや登り勾配になるため、グリーンの位置や輪郭が見え難い。そこでグリーンフロント部分を手前に下げて、入口を見えるように工夫しました。我々専門家が“ベロ”と呼んでいるグリーン前部を下げる造形です。これも米国の設計家にはお馴染みの設計方式でしょう。

……マスターズを開催するオーガスタナショナルGCを球聖B.ジョーンズと共同設計したA.マッケンジー博士は理想的なコースの条件として4箇条を挙げています。1.真に偉大なコースはより多くのプレーヤーに愉しみを提供する。2.技術と同時に戦略性を必要とする。3.アベレージにフェアなチャンスを与える。同時にパー以下のスコアを狙う上級者にも。4.すべてが自然なハザードで、人工的なものは極小に。
その意味で、ここ東コースは上級者に厳しく、アベレージ・プレーヤーには心優しいグリーンになったという印象です。

海津 上級者には易しいグリーンかも知れませんが、力ずくでコースを捻じ伏せようとすると大けがするのはどこも同じでしょう。頭を駆使して理屈通りに攻めれば良い結果になるはずです。ゴルファーの中で上級者は一部、大半はアベレージですから、彼らにゴルフの醍醐味を知らせたい。
米国のマスコミでコースを評価する規準の一つに“プレーアブル(playable)なコース”というのがある。競技の出来る≠ニか“勝負を行える”コースという意味ですが、ゴルフ場とは競技場ですから、プレーアブルでなければなりません。それも上級者だけではなく、アベレージ・プレーヤーがより多く愉しめるものという条件が付いた上で。

ここ房総CC東コースの1グリーン化改造を見て、改めて良いコースとは?について考えさせられた。“強きを挫き、弱きを助けるコース設計”こそ基本だと思う。

(文責・西澤忠・名誉協力会員)

 

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