環境整備の重要性 |
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樹木(林帯)はゴルフコースにおいて重要な役割を果たしています。ゴルフプレーにおける指標としての存在に欠かせず、四季折々の様相が楽しめ、大気の温度調節や陽光を和らげるなどの効用もあります。開場から歴史を重ね、コース内の自然樹林も生長し、重厚さも増してきております。しかし、ゴルフコースの名声を一層高め、メンバーならびにゲストプレーヤーの皆様に更に愛されるコースになるには、自然とのバランスを図った環境整備が重要です。
樹木・芝草は日々生長し、様相を変えていきます。その樹木・芝草を適切に管理することで、プレーヤーはコースの完成度の高さを実感します。どんなに素晴らしいデザインのコースでも、適切なコースメンテナンスがなされなければ高い評価を得ることはできません。コースメンテナンスはコースデザインと共に、コースが高く評価されるための最重要素です。そしてその大事な要素の一つに環境整備があり、各ホールの更なる美しさを追求し、実現するには樹木(林帯)環境整備を行う必要があると思われます。
環境整備箇所 |
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ゴルフコースにおける整備すべき樹木は、以下のとおりです。
1.ホールの限界幅を示し、ホール間をセパレートしている樹木
2.ゴルフコース外周を取り囲むように残存する林帯
3.造成に伴う法規制によりホール間や法面等に植えられた樹木
4.意図的にハザードの役割を担わせるために植えられた、または残された樹木
5.ホールの景観を演出する、あるいは目障りな構築物を遮蔽するために植えられた樹木
6.ホール境界に植えられた生垣や低木などの樹木
7.カート道路・歩径路沿いの遮蔽や安全確保のための樹木
元来、樹木は芝草管理同様、定期的・計画的な管理が必要です。しかしながら、その生長を傍観し、時の変遷にゆだねてきたものが、気がつけば粗放的繁茂により、
・日陰部が多くなり、風通しも悪くなって、健全な芝草の生育を阻害する。
・ホール幅を狭くしたり、景観を遮蔽したり、プレーに支障をきたす。また設計意図を損なう。
・密生による林帯内の樹木環境が悪化し、また名木の存在価値が薄れる。
などの環境に変わってしまうのが実情ではないでしょうか?
効用と目的 |
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そこで、環境整備の第一歩として林帯部分の整備が重要となります。林帯の間伐・樹木の枝打ち・下草および雑木の処理を行い整備することにより、
1.日照・通風の改善(空間の形成)による自然環境の向上
2.林帯の中の主要木の環境改善
3.上記により植物生育環境が向上し、芝生と樹木の共生が図られる
4.芝の緑、樹木の濃淡ある緑と幹の色、山肌の自然色という色のコントラストがより強調される
5.四季折々の樹木特性(花・香り・実など)による癒し効果の向上
6.コース管理作業の機械化面積の増加による作業の省力化
などの効果が期待でき、より周辺環境との調和がなされ、景観のさらなる向上が可能となります。
ゴルフコースにおかれては、
・グリーン、ティー、フェアウェイ、ラフの芝草環境の改善
・適度な間伐、下枝打ちによるプレー環境、林帯の芝・樹木環境の改善
・主要木の適切な枝打ちによる、景観(樹姿)・樹勢の向上
・不要な生垣の撤去、枝打ち・間伐による空間の形成による明るさ、開放感の改善
・プレーに支障をきたす、スルーザグリーン内の玉物の除去
などを目的に、樹木(林帯)環境整備をおすすめします。
実践における留意点 |
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実践に際しては、一度に完成形を求める方法は避け、段階的に実施することが賢明で、後悔することの無いよう心掛けたいものです。
目的を見失わないよう、背景のバランス・遠近感の演出・群落の輪郭と樹種・当該箇所の戦略性やプレー環境・安全性を意識し、樹姿・樹勢を見極め、前方・後方・横方向からのビューバランスのイメージを確認し、確実に不要なものから間伐を実施した後に、支障となる枝打ちと主要木の整姿のための枝打ちを行い、慎重さと大胆さによる繊細な美的感覚により完成形へと導くことが大事です。また、根の張り具合や盛土・堆積土による二重根の有無を診断し、樹勢の回復や生育不良の改善も重要です。
樹木整備の実例 |
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掲載した写真は、グリーン周辺の実例写真です。おそらく開場当時は芝地であった場所が、樹木の繁茂に伴い芝が衰退し裸地化が進んだと思われる部分において整備を行ったものです。上記の手順で、密集部分の雑木の間伐・下枝打ち整姿を実施し、隣接ホール・借景造形の稜線と陰影・空間形成による明るさ等を魅せ、景観を演出し、植物生育環境の向上を図りました。日照量の増加による芝環境の向上日照量と通風量の増加による表層の乾燥速度の向上および軟弱箇所の改善、芝草管理作業が容易となる等の効果が立証されています。
樹木(林帯)環境整備についてご理解いただき、遅すぎない段階での実施に期待します。 |