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「Par3ホール設計コンテスト」は、ゴルフ100年祭の公式行事として日本ゴルフコース設計者協会が主催し、チョイス編集部の後援のもと2001年4月1日から8月25日まで一般公募が行われました。合計108通の応募があり、コンテストの結果はチョイス誌(2001年11月号;2001年10月1日発売)で発表されました。
ここでは応募告知から入賞作品の発表までを、チョイス誌記事をもとに応募作品の図版などを加えて再録しています。 |
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VOL.2 チョイス
2001年 7月号 ゴルフコースの「仕掛け」が見えた |
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ゴルフコースの「仕掛け」が見えた |
多忙なお二人が会ったのは都心のオアシス、明治記念館。
千坪の中庭はエバーグリーンの洋芝が美しい。
そんな絶好のロケーションの中、対談は途切れることなく続き、私たちに"コースの読み方"を教えてくれた。 |
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佐藤謙太郎 |
デビュー作はジャンボ尾崎との共作の鷹彦スリーカントリー。海外4コース、国内21コースを設計。戦略性の高いコースでありながら、自然との調和を大切にしている。日本ゴルフコース設計者協会理事、パー3コンテスト担当 |
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羽川豊 |
専修大学時代に日本学生などを獲り、80年にプロ入り。その翌年には日本オープン、日本シリーズに優勝。マスターズ15位の実績もある。"世界のレフティ"の復活を望む声は今も大きい。最近はテレビ解説者としても活躍している。 |
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1 OBなんか気にしているとゴルフが下手になる! |
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佐藤 |
ゴルフコースには必ずコース設計家の創作意図があります。プレーヤーがその作風を読み取れれば、ゴルフがもっと楽しいものになると思うのですが、羽川さんの場合は? |
羽川 |
初めてラウンドするコースの場合、攻略ルート、罠の位置、簡単そうに見えて実際には難しいところなどをチェックします。次にラウンドするときには、もう設計家にはだまされませんよ。(笑) |
佐藤 |
だますだなんて。(笑)上手なプレーヤーが設計家の意図を見抜いてコース攻略に成功するのは、私たち設計家にとって最高の喜びなんですよ。では、アベレージクラスの方が"コースを読む"には、どこをポイントにしたらいいのでしょう? |
羽川 |
どうやってコースを読むのかと質問されたら、アマチュアの皆さんには、まずフェアウェイのど真ん中に狙いを置くことをすすめます。ティグラウンドでその方向に正しく構え、左右を意識せずにストレートボールを打つこと。プロだってホールに合わせてボールを曲げたりするのは、よほどの必要に迫られてからですよ。 |
佐藤 |
なるほど。ホールの攻略にはティグラウンドでの観察がなによりも大切ですね。設計の実務でも、ホールに対してストレートなラインを最初に意識しますし、ドッグレッグホールなら適切なポイントにハザードなどを設置し、その先の曲がりが読めるように造るのが一般的です。 |
羽川 |
ゴルファーの考え方で、コースの見方そのものが変わってきますね。試合で厳しく攻める場、技術を磨く場、楽しく遊ぶ場・・・・・・。また、個々の技量によってもプレーの仕方が違います。自分と戦うか、相手と戦うか、ショットを楽しむか、楽しんでショットするか、技術がアップするごとに、ゴルフコースの見えないところが見えてくるでしょう。 |
佐藤 |
確かにプロからアマまで、技量に合わせて楽しめるコース設計が理想です。第1打の飛距離の差は使用ティで対応できますし、第2打のランディングエリアからアプローチエリアは、全員にフェアになるような設定です。 |
羽川 |
プロには厳しく、アマにはやさしいコースなどと言いますが、そんなコースがあるわけないですね。プロに厳しければ、アベレージゴルファーにはもっと難しい。(笑) |
佐藤 |
実際に、そんな不可能な設計の注文もあるんですよ。(笑) |
羽川 |
設計にとりかかるとき、佐藤さんが最初にイメージすることは? |
佐藤 |
頭に浮かぶのは18ホールをとおしてのメロディ(旋律)です。それと各ホールのバランスですね。音楽と同じで静かに流れるところと盛り上がる山場のバランスが取れて、はじめてリズムが生まれます。 |
羽川 |
ホールの難易度に変化をもたせて、プレーヤーにリズムを感じさせるのですね。最初はやさしくスタートして、攻めるか守るかを判断したいところです。1番ホールから左右にクリークが流れているようなコースでは、出だしから疲れてしまいますもんね。 |
佐藤 |
ゴルファーは大たたきするとすぐ、設計かにいじめられた、と言うでしょう? |
羽川 |
それ、ただ技術がないだけなのに。(笑) |
佐藤 |
ナイスショットなのにグリーンが固くてボールが止まらないとしたら、確かにアンフェアです。設計ではグリーンの手前を受けるなどの工夫をします。また、残り1〜2メ−トルでもパットが曲がるようなラインに、ピンポジションは造りません。 |
羽川 |
ぼく個人としては、コースにいじめられたとは思いませんが、難しいからといって逃げを考えたらゴルフがダメになるでしょう。ゴルフはいつも、どこでもアグレッシブに!逃げてはいけません。 |
佐藤 |
なにがなんでもドライバーで打つ、というのはまた別の問題ですね。ポジションに打つ、点に打つ。 |
羽川 |
残念なのは、アマチュアの皆さんの大半が、ティグラウンドで同じことをキャディに尋ねるのです。「OBはどっち?」って。中には広々としたホールで、まずボールが行かないようなOBまで探してしまう人がいますからね。(笑) |
佐藤 |
日本のゴルフ場は狭いですからね。 |
羽川 |
正しい方向を向いて、正しく構えるのがティグラウンドでの唯一の戦略なのに、そこでOBばかり気にしているとドライバーショットが下手になりますよ。怖がらずに、敏感になりすぎずに、のびのび打ってほしいものです。 |
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2 難しいコースがコースの読解力を育てる |
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佐藤 |
正しい方向を向く場合、ティグラウンドの向きで錯覚するゴルファーが多いですね。ティは基本的にはセンターに正しく向けて造られるのですが・・・・・・。 |
羽川 |
オーガスタナショナルGCの12番ホール。距離がないので8番アイアン程度でホッとするのは簡単です。あそこに、”罠”がし掛けられているのですが、誰もコメントしないんですよ。 |
佐藤 |
ほほー、興味ありますね。 |
羽川 |
12番には左右にティが2つありますね。グリーンも横長で、ピンの位置も毎日、左右が入れ替わります。マスターズの練習日は右のティから右のピン、左のティからは左のピンを平行に狙わせるように設定されています。
それが、マスターズ本戦の4日間は、プレーラインがクロスするように替わります。トッププロでも、右や左の奥にボールを突っ込むでしょう?
あれは風のせいばかりではありません。ティで方向が合わせにくいのです。
(注・羽川プロはマスターズで15位入賞の実績がある) |
佐藤 |
なるほど。世界のトッププロでも正しくアドレスできない・・・・・・。 |
羽川 |
ゴルフは錯覚のゲームです。設計家との戦いですね。 |
佐藤 |
設計では、ゴルファーに錯覚を覚えさせる方法もあります。例えば実際の距離より短く感じさせるには、ハザードを手前に置く。反対に距離を長く見せるには、グリーンの形をタテ長にするなどです。 |
羽川 |
プロでも視覚から入るから、残念ながら佐藤さんを喜ばせて、それに引っ掛かります。ただし、最初のラウンドだけで、次からはすぐに対応できますよ!(笑) |
佐藤 |
プロの距離の打ち分けには狂いがないから、2度目にはだませませんね。 |
羽川 |
ヤード刻みでショットできてはじめて、自分なりの"コースの読み"が可能なのかもしれません。風の判断、パットのタッチなどの対応も、1回経験するとわかります。 |
佐藤 |
アベレージゴルファーに、ヤード刻みの正確なショットを要求するのは少し酷。他にコースと対話する方法はありませんか? |
羽川 |
練習でしょう。コースに練習場は不可欠。ぶっつけ本番、ラウンド後にビールでは、コースは読めませんよ。 |
佐藤 |
コースが難しいほど、読みは鍛えられますね。前回はボールを10個なくした、今回は5個だった・・・・・・これも進歩ですよ。練習があってこその。 |
羽川 |
日本のゴルフ場には春夏秋冬があり、気候も日々変わりますね。これが面白さでもあり、またゴルファーが考えすぎてしまうところでもあるのでしょう。 |
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3 プロにとってのパー3ホールはティとピン周り数メートルで十分 |
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佐藤 |
私たちコース設計者協会では、日本のゴルフ百年を記念して『パー3コンテスト』を公募しています。羽川さんの考える理想のパー3ホールは? |
羽川 |
ミスショットがパーオンするようではいけません。上からボールを落としてきちんと止め、点で狙うホールを面白いと感じます。 |
佐藤 |
ミスしたら救いがない"課罰スタイル"かな? |
羽川 |
ぺブルビーチゴルフリンクスには、その日の海風によってピッチングウェッジからスプーンまで使い分ける7番ホール・107ヤードのパー3があります。 |
佐藤 |
周りが海、あるいはアイランドグリーンだと、ウォーターハザードに入った位置によってはドロップエリアがないといったルール上の問題も出てきますね。 |
羽川 |
個人的には、パー3で逃げてはつまらないですよ。外しても安全なルートはあっても、最初から安全を考える必要はないのでは?腕前に関係なくです。 |
佐藤 |
飛距離が届かない場合、リカバリーが効かないのではそこでゴルフが終わってしまいます。 |
羽川 |
その意味からするとアイランドグリーンはつまらないですね。景観もきれいではありません。また、プロ競技用に設定された240ヤードのパー3というのも面白くないものです。ただ打つだけですから。 |
佐藤 |
オーガスタの16番・パー3は美しいホールですね。自然の中にあってシャープに見える。 |
羽川 |
マスターズのときは左の池も花も見ていませんでした。(笑)あの最終日の左のピンの位置は、一番やさしいところですよ。ピンにかぶせて打っていく必要がない。 |
佐藤 |
右に乗せれば自然に転がって寄っていく。 |
羽川 |
初日、2日目はピンが右の手前ですここでバーディを取るには2〜3ヤードに着ける以外にありません。右のバンカーは、まずボギーでしょう。それでも可能性が何パーセントかでもあれば攻めます。達成したときの気持ちは、なににも替えがたいほど嬉しいものですよ。 |
佐藤 |
今後のゴルフコースは? |
羽川 |
結果的にミスして大たたきしたとしても、コースの読み方を教えてくれる難しいコースと、楽しく練習のできるコースに二極分化するのではないですか? |
佐藤 |
中途半端はダメですね。 |
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これが最新コンピュータ設計だ! |
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1 岡本綾子プロ自筆のイメージスケッチ |
平成10年に開場した猿島(さしま)CCのラフスケッチ。岡本綾子プロは仏様の顔をイメージしたが、これを800平方メートルの実際のグリーンに造成するには難問が山積みだったとか。 |
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2 地形に合わせてデータを入力する |
コース設計は大日本土木(株)ゴルフ場設計室長の海津康志氏。
「顔の形をしたグリーンははじめて手掛けました。鼻などの立体感を強調しすぎると、ボールが止まらなくなります。とはいえ平板では顔だとわかりません。その兼ね合いです」
そこで活躍したのがコンピュータ設計の"キャドシステム"だ。岡本綾子プロと海津氏は現地を何度も訪れ、修正を加えた。 |
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3 三次元画像にしてシミュレーション |
キャドシステムとは別に3Dソフトを併用する。あらゆる方向からの立体画像の再現が可能だ。グリーンの起伏は仏様の柔らかい表情が出て、パッティングプレーの面白みも感じられる。 |
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4 完成した猿島CCの15番ホール |
パー3。バックティからは228ヤード。仏様の胴体部分は大きなウォーターハザードになっており、左右の耳にあたるバンカーも曲者の名物ホールになった。 |
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世界の名パー3にはこんな設計のトリックがあった! |
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1 逃げ道のない心理的な罠 |
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TPC・PGAウエスト
17番ホール・164ヤード
ピート・ダイ設計
池に浮かぶアイランドグリーンの攻略には、確実な距離感と方向性が求められる。心理面がハザードになる典型。 |
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2 巨木が演出する距離の錯覚 |
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メリオンGC
9番ホール・193ヤード
ヒュー・ウイルソン設計
左右の巨木が距離を長く錯覚させる。グリーンは9つのバンカーにガードされ、奥のバンカーからは難易度が高い。 |
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3 強い海風が「空」のハザード |
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ペブルビーチゴルフリンクス
7番ホール・107ヤード
ジャック・ネビル設計
無風ならSWの距離を、強烈なアベンストではスプーンで打つ。自然の風を演出した世界有数の名物ホール。 |
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参加資格 |
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将来、コース設計家を目指す方でも、ゴルフはパソコンゲームだけの未経験者でも構いません。応募の際は住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記してください。 |
応募期間 |
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2001年4月1日から8月25日 |
表現方法 |
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筆記具や用紙、描き方は問いません。エンピツのスケッチでもパソコンからのプリントアウトでも、立体的なスケッチでも平面図でも、自由に描いてみましょう。絵の苦手な人はパー3の設計コンセプトやホールの構想を、めも書きにしていただいても構いません。それを基に、プロの設計家が設計図を制作します。 |
賞 |
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日本ゴルフコース設計者協会賞特選1点(表彰状と記念品)
入選数点(アイデア賞、チョイス賞、作図優秀賞、その他) |
審査 |
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日本ゴルフコース設計者協会会員およびチョイス編集部 |
結果発表 |
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チョイス2001年11月号誌上(2001年10月1日発売)
特選、入選者には直接通知します。 |
その他 |
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応募作品の返却を希望される方はその旨を明記してください。
入選作品の著作権は日本ゴルフコース設計者協会により管理されます。 |
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