 |
|
「Par3ホール設計コンテスト」は、ゴルフ100年祭の公式行事として日本ゴルフコース設計者協会が主催し、チョイス編集部の後援のもと2001年4月1日から8月25日まで一般公募が行われました。合計108通の応募があり、コンテストの結果はチョイス誌(2001年11月号;2001年10月1日発売)で発表されました。
ここでは応募告知から入賞作品の発表までを、チョイス誌記事をもとに応募作品の図版などを加えて再録しています。 |
|
|
|
|
|
|
VOL.1 チョイス
2001年 5月号 こんな『パー3』があったらいいな |
|
|
『パー3設計コンテスト』にチャレンジしよう! |
ワンオン、ツーパットがパー3ホールの基準打数だが、ホールイン"ワン"もあればダブルパーの"6"もある。ゴルファーのショットバリューを厳しく評価すると同時にメモラビリティ(印象度)の高い景観も演出できるのがパー3ホールだ。
まさに設計家の腕の見せどころ。
そんな夢の舞台を、あなた自身の手で設計してみよう。 |
|
|
佐藤謙太郎氏 |
|
デビュー作はジャンボ尾崎との共作の鷹彦スリーカントリー。海外4コース、国内21コースを設計。戦略性の高いコースでありながら、自然との調和を大切にしている。
日本ゴルフコース設計者協会理事
パー3コンテスト担当 |
 |
|
|
|
|
1 豊かな感性が名ホールを生む |
|
|
記者 |
世界にもあまり例のない、今回の『パー3設計コンテスト』の、企画主旨を教えてください。 |
佐藤 |
残念ながら最近、ゴルファーのゴルフ離れが進んでいるようです。また、若い人はサッカーなどに興味が流れ、ゴルフ人気は下降の一途。そこで、コースを知ることでゲームの面白さを再確認していただこうと、パー3の設計プランを公募することになりました。コース設計家志望の方も、ゴルフをしたことのない人からの応募も大歓迎です。 |
記者 |
このコンテストは日本ゴルフコース設計者協会主催、ゴルフ百年祭の公式行事にもなっていますが・・・・・・。 |
佐藤 |
私たちコース設計の専門家が、腰を抜かすようなアイデアを期待しています。
歴史上では1914年に、世界ではじめて米国で開催されて設計コンテストにA.マッケンジー博士が応募し、革命的な"戦略型ホール"という発想を提案して優勝しています。博士はその後、オーガスタナショナルGCなど世界遺産ともいうべき名コースを、実際に設計しました。 |
記者 |
コースを設計する際の基本は? |
佐藤 |
設計パターンを大別すると、戦略型(ストラテジック)、課罰型(ペナライズ)、報酬型(ヒロイック)スタイルがあります。
戦略型の代表例はオーガスタナショナルGC。課罰型は米国で1、2位にランクされるパインバレーGC。また、英国ナンバーワンコースのセントアンドリュースGCも課罰型です。報酬型には米国のメリオンGCなどがあります。実際のコースには、この3タイプの要素が随所にミックスされています。
パー3ホールで、池の中にある170ヤード先のアイランドグリーンを攻めるような典型的な課罰型の場合、150ヤードしか飛ばない人はそこでゲームが終わりです。
ミスしても次打でリカバリーができる、あるいは最初から安全な攻略ルートを選べる戦略型が、設計の基本でしょう。
ハザードは、ゴルファーをいじめる仕掛けではありません。 |
記者 |
池やバンカーも? |
佐藤 |
多くの設計家は、ハザードの存在がゴルファーに与える心理的な要素を重視します。ゴルファーが頭を使わないで、ただ結果を求めるパー3なら、ティグラウンドとグリーンだけ造ればいいのですから。 |
記者 |
設計家の資質とは? |
佐藤 |
設計は感性を求められます。より多くのゴルフ場を見たり、本を読んだり、いい音楽を聞いたりして日々感動を味わって生きているうちに感性が研かれる。ときにはクラシック音楽の旋律が突然浮かび、それがホール設計のイメージになったり・・・・・・。自分を主張するようで恥ずかしいのですが、日々、反省しきりの大変な仕事です。(笑) |
記者 |
実務では? |
佐藤 |
18ホールは4本のパー3とパー5、10本のパー4で構成されるのが一般的ですが、ぼくはその全部でパー3ホールを連想します。パー4のセカンドショット地点やパー5のサードショット地点からは、パー3ホールに共通する要素をセットするのです。もちろん、単純な組み合わせではありませんが、その要素を大切にタテのハザード、ヨコのハザード、空のハザードを考えます。 |
記者 |
ハザードには視覚からくる心理的な効果がある。それにタテやヨコや空があるのですか? |
佐藤 |
タテのハザードとは打ち上げ打ち下ろしといった地形の高低差。プレーヤーは距離の計算やショットの高低の打ち分けが必要でしょう。ヨコのハザードとはそのホールに設置するウォーターハザード、バンカー、マウンド、樹木、ラフなどのあらゆる戦略的な要素。この配置とバランスが重要です。
空のハザードとは風。そしてぼくの設計のテーマである光と影の演出です。 |
記者 |
風を読む楽しみは理解できますが、光と影とは? |
佐藤 |
コース設計で一番難しいのは、自然に帰ることです。ゴルフコースは人工物に溢れていますが、極力それらを自然と同化させることが、ぼくの追い求める設計テーマです。例えば砂漠の中にあるコースだと緑のシバ、水、樹木などのすべてが周囲の環境とかけ離れています。これをいかに自然と同化させて、デザインのバランスをとるかが課題です。
ひとつの方法として、太陽の日差しを利用して、ゴルファーの目を地面に向けさせる演出も可能です。 |
記者 |
光でゴルフコースを演出するのですか? |
佐藤 |
はい。周囲の山々などの借景が美しいところなら、朝夕の斜光を利用して、コースにも自然の景色と同化する陰影を演出したいですね。 |
|
|
2 ここがポイント!
パー3設計の約束ごと |
|
|
記者 |
読者がパー3の設計に挑戦する際の、コツを教えてください。 |
佐藤 |
自由な発想とはいえ、ゴルフという素晴らしいゲームの理念から極端に逸脱したものは避けましょう。また、300ヤードの飛距離がある人が、自分を基準にパー3を造っても、他のゴルファーは楽しめないかもしれません。条件の設定に無理がないように研究してみましょう。 |
記者 |
パー3ホールの距離は? |
佐藤 |
パーに応じた距離の目安があります。表の距離は立地がレベルの場合の基準なので、打ち上げや打ち下ろしによって若干の増減は許されます。個人的にはゴルファーが7番アイアンで打てる距離のパー3を面白く感じます。この番手のクラブでティアップして打てば、だいたい狙いどおりに打てるはず。そこで風を利用したり、心理的な効果を計算してハザードをセットするのです。 |
記者 |
グリーンについては? |
佐藤 |
広さは約250uから1200uぐらいまでが標準です。かたちは星、花、月・・・・・・いろいろ考えられそうですね。
グリーンの傾斜やマウンドなどは、実際の設計図では10cm間隔の等高線(コンター)で表し、最終的な数字は1cm刻みになります。通常は、いわゆる"ベタピン"内のパッティングエリアは0〜3%ぐらいの傾斜が望ましい。アンジュレーションが5%を越える下り傾斜では、ボールがグリーン外に転がり出てしまうでしょう。 |
記者 |
ティグラウンドは? |
佐藤 |
チャンピオンティ、バックティ、レギュラーティ、レディスティと、4ヵ所ほど造るのが一般的です。戦略的に必要なら、もっと楽しめるティを考えてみましょう。距離だけでなくティの位置を前後にして高低差をつけたり、プレーラインに対して左右に設定すると、さらに球趣が増すでしょう。 |
記者 |
ウォーターハザードには海越え、池、クリーク、河川、滝、噴水など、いろいろありますが・・・・・・。 |
佐藤 |
水面は使い方によって心理的な効果も、難易度も高めることも、ホールの景色を美しく演出することもできます。ショットバリュー(1打の価値)とメモラビリティ(ホールの印象度)にはとくに効果的です。 |
記者 |
バンカーはどうですか? |
佐藤 |
かたち、大きさ、深さ、ホール戦略上もっとも重要な要素です。ときにはミスショットを救済する、いわゆる"お助け"バンカーもあります。 |
記者 |
グリーン周りのマウンドは? |
佐藤 |
英国にはグリーンを半分隠してしまうようなマウンドもよくあります。配置によってはマウンドの傾斜にボールを当てて、その転がり方でピンを攻めるという攻略ルートも考えられます。 |
記者 |
他にアドバイスは? |
佐藤 |
図示できない風や光の具合などはメモ書きで説明してください。奇想天外な自然条件でも、応募者自身が選べます。夢のホールインワンを達成しやすい仕掛けや演出を考えるとか、まだラウンドしたことのないジュニアの皆さんの入門用とか、楽しいアイデアを待っています。 |
|
ティグラウンドを船上に |
|
高校1年のゴルフをしたことのない女の子の作品。湖に浮かぶ船の上から打つ。これならホールまでの距離も、プレーラインも自由に変えられる。ただし、風が吹いて水面が波立ったりすると、ティグラウンドの船が揺れてショットは大変!(パソコン使用) |
 |
|
|
|
マッケンジーの公募作品 |
|
1914年に行われた"理想的なパー4"の設計コンペで優勝したマッケンジー博士の作品。グリーンへの攻略ルートが5本明示してある。この戦略型ホールの発想は、以後のコース設計を根底から変える革命的なものだった |
 |
|
|
|
プロのマスタープランは平面図とスケッチで |
仕上がりイメージのスケッチ図でわかるように、飛ばない人にも左に攻略ゾーンを設定してある(えんぴつ画) |
 |
|
|
|
参加資格 |
 |
将来、コース設計家を目指す方でも、ゴルフはパソコンゲームだけの未経験者でも構いません。応募の際は住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記してください。 |
応募期間 |
|
2001年4月1日から8月25日 |
表現方法 |
|
筆記具や用紙、描き方は問いません。エンピツのスケッチでもパソコンからのプリントアウトでも、立体的なスケッチでも平面図でも、自由に描いてみましょう。絵の苦手な人はパー3の設計コンセプトやホールの構想を、めも書きにしていただいても構いません。それを基に、プロの設計家が設計図を制作します。 |
賞 |
|
日本ゴルフコース設計者協会賞特選1点(表彰状と記念品)
入選数点(アイデア賞、チョイス賞、作図優秀賞、その他) |
審査 |
|
日本ゴルフコース設計者協会会員およびチョイス編集部 |
結果発表 |
|
チョイス2001年11月号誌上(2001年10月1日発売)
特選、入選者には直接通知します。 |
その他 |
|
応募作品の返却を希望される方はその旨を明記してください。
入選作品の著作権は日本ゴルフコース設計者協会により管理されます。 |
|
|
|