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コース改造設計のオピニオン・プラザ
月刊ゴルフマネジメント Architect's Corner  2016 May. 協力:一季出版(株)
第35回 三重カンツリー倶楽部の巻
 

原設計/ 保田 与天
改造設計監修/ 中田 浩人

ゴルフコースの改造にとって何が最重要ポイントなのだろうか。まずゴルフコースがある。そこには原設計者が存在し、その思想・哲学がある。営業開始以来の時間経過、自然の変化もある。
そしてゴルフ環境の変化と、コースの時間的劣化に対応すべく、コース側が“改造”へと動く。無論、広い意味での経営戦略と狭い意味での営業戦略がその端緒であろう。コース側としてみれば、現在のゴルフ環境の中で他コースとの差別化を図る拠り所としてコース改造に予算を投じる意味も出てくる。
今回の舞台は三重カンツリークラブ。昭和35(1960)年10月2日の開場。ローマ五輪の年だから、それからかなりの歴史を経てきた。経営母体は三重交通グループホールディングス(株)。御在所連峰の山並みを望み、四日市の街並みの眺望の中に流れる2本の河川を取り込んだ丘陵地に、“レジェンド”というべき保田与天の設計で戦略性にとんだ18ホールが広がっている。

ディレクターが思う保田与天へのリスペクト

保田与天は知る人ぞ知る名匠。上田治、井上誠一らと比べるとコース数こそ少ないが、九州福岡の和白(福岡カンツリークラブ)など傑作のデザインを手掛けている。三重カンツリークラブも保田の名作の一つだ。
今回の改造のディレクターである中田浩人氏も「和白はトータルバランスの上で素晴らしい傑作といえます。それは時を重ねてますます光を増している」とべた褒めだ。
その思いは三重カンツリークラブのコースを眼にした現在も同じで、中田氏の保田与天に対するリスペクト度は大きい。従って改造といっても全体に流れる保田イズムをいじる気はない。ただ経年劣化による綻びを改善したいという思いがあった。保田に対する思いはコース側も大きく、現場サイドもメンバー諸氏も本社サイドも保田与天設計というプライドを持っている。それらが中田氏の思いと相容れる所があり、“改造”をスムーズにしたといえる。
今回のケースは中田氏の思いと、また彼がコースメンテナンスを請け負っている会社のディレクターであり、そして設計者協会会員という立ち位置であることが改造をスムーズに進めた要因だ。

経年劣化の象徴がバンカーの綻びだった

「長い歴史の中で初めて大掛かりに手を入れることになったバンカー改修でした」(中田氏)
その目的は3点に絞られた。(1)排水不良の改善。(2)崩れかけたバンカーそのものの修正。(3)バンカー砂の変更入替。その中で今回はメイングリーンのガードバンカーが工事対象で「これらをこの1〜3月に行い、来年にはサブ側とコースバンカーを進めるという2段階です」と中田氏。
こうしたやり方にも予算をやり繰りするコース側の苦労がしのばれるが、なぜ今改造にという思いもする。
「何気ない日常のメンテナンスの中で50年の月日の流れは、設計の意図や造形美を継承するという意識を忘れさせたように感じました。この工事は、コースに対する管理意識の向上、更には脱皮を図る意味でもいいチャンスだったと思います」中田氏は語る。
保田与天設計というコースに対するプライド。しかし全体のレイアウトはともかくとして、メンテナンスに充分な手当をしていかなければ、早い話、見栄えが悪くなる。これはコース側もそうだが、プレーするゴルファーが大いに感じる所だろう。この6月には三重県オープンというイベントも開催される。
改造予算はあくまでマイナスの数字で、経営的にはリスクとなるが、プレーヤーがその都度感じる見栄えの悪さはジャブとなって、トータルでは将来に大きなリスクとなる。改造に踏み切ったことはコース側の英断といえる。

バンカーはデザインセンスが最も表現される所

バンカーについて中田氏は語る。「設計家にとって設計意図とデザインセンスが最も表現される重要な部分です。グリーンが顔とすれば目元の表情のようなもの。どんなアイラインで優しい目元にするか、凛とした、はたまた怖そうな顔つきにするかは、その配置や深さ、ライン取りのありようで変化していきます。ターゲットラインや、ティー、IPの位置関係、グリーンとの関連性、個としての一つのバンカーは全ての関係性の中にあります」
こうした中で改修現場での留意点とは?
「目的の3点以外でも、プレーヤーにとっての入り込みやすさと出やすさ……というプレーヤービリティーを確保しながら、美しく見せるための砂線の補正。更にグリーンに対しての配置については無理がない範囲で接近させました」と中田氏。
なるほど、コース改造とは細部に渡っての気配り、それをトータルバランスの中で行いたいという中田氏の立ち位置が伺える話。具体的な現場の進行はどうだったのだろうか。
“現場”を大切にする中田氏らしい答えが返ってくる。
「こうした改修では図面を書いてゆっくり進めることはできません。芝を剥がすラインから土砂の切り盛りについての指示、最終の芝線の微妙なライン取りといった全てを後戻りの無いように進める立場にあった訳で、施工がスピードを保ちながら進められるようにその場で瞬間的に指示しなければなりません」と中田氏。実際に2業者による2班体制で現場は進行していった。
実際のところ米国では、最初の設計においても細部の指示は図面だけでなく、現場で変化することが多いようだ。これはデザイン事務所=設計者と施工業者がセットになっていて、手の内が知れているから細かい図面など必要としないということだろう。
日本では一部例外もあるが、設計者と施工業者は別。従って細部に渡って図面で指示しなければならなくなる。しかし図面はあくまで図面。業者が複数社あると細かいテイストは違ってしまい、統一されたバランスの良さは失われてしまう。
中田氏の嫌う所もそこで、「コース設計ではクラブの基本コンセプトに合っているかの検証をないがしろにしてはならない。ゴルフコースはトータルバランスで、設計者のイズムを生かしていかなくては、ゴルファーにそっぽを向かれてしまいます」と語る。
この改修工事は、プレーヤーへの配慮から施工箇所を最小限にする工夫をもって、工期内に無理なく工事完了となったが、それも中田氏のようなディレクターが現場で指揮した賜物と言える。6月の三重県オープンの成功が期待されるところである。
ゴルフ場環境は、ますます厳しい時代に入ってゆく。コースの中には、コースの価値や潜在能力に気付かずに、誤った方向、例えば“安売り”路線に向かっている所が多いようだ。だが、こんな時期だからこそ、コース改造によって、一つも二つもランクを上げて、美しく愛されるコースへの脱皮も考慮されていいのではなかろうか。
三重カンツリークラブの改修はそれを考えさせてくれた。

(文責・井口紳)

 

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