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コース改造設計のオピニオン・プラザ
月刊ゴルフマネジメント Architect's Corner  2014 Jun. 協力:一季出版(株)
第12回本厚木カンツリークラブの巻
 

原設計/ 赤星四郎
コース改造設計監理/ 倉上俊治

これまでの連載の中でコース改造の流れをベント1グリーン化という中で見てきた。生き物であるゴルフコースの手直しと、戦略面からの1グリーン化、及びゴルフプレー状況の変化に原設計者の設計意図を反映させる……などが改造のテーマであった。
ただ高温多湿の日本の夏にベント芝の管理は難しい……ということで始まったベント・コウライの2グリーンが日本のゴルフ文化。
それだけに現場ではそのシステムへの固執も見られる。その折衷案としてできたのが、コウライグリーンのベント化という方法だった。

赤星四郎氏のマインドを残して

本厚木カンツリークラブは名コースが多い神奈川県でも昭和37年(1962年)の開場と半世紀を経て、戸塚や相模原といった華やかさはないものの、知る人ぞ知る名コースである。元牧場であった緩やかな丘陵地に、日本ゴルフ史のレジェンドと目される赤星四郎氏の設計によって、自然の起伏を生かした雄大な18ホールが広がっている。
本厚木CCでもご多分にもれず、半世紀を経たコースの改造が必要との声が上がった。
コース改造に当たった倉上俊治氏への依頼は「赤星四郎氏の設計コンセプトを守ることでした」(倉上氏)。
牧場地の起伏に広がった18ホールは赤星マインドを反映して自然の地形を生かし、既存樹林を残した豪快で球趣に富んだもの。それは何より会員諸兄に愛され誇りとなった半世紀だったと言える。
「その意味でのプレッシャーと、やりがいは強く感じました」と倉上氏は語るが、心境は例えて言えば往年の名画の修復に当たる技術者に重ねられる。
ただし、本厚木CCからの依頼はあくまでコウライグリーンのベント化であってワングリーン化ではなかった。
工事期間は2007年の2月12日から5月30日までで、その前年の12月にコースの詳細測量を行った。「改造のポイントは赤星イズムを尊重しつつ依頼に従った2グリーン……」と倉上氏。
ここで原設計を見てみると、例えば15番ホール・パー3はベント、コウライグリーンは完全にセパレートされていた訳ではない。
元来のベントグリーン(ペンクロス。以下Pグリーン)のやや右手前にコウライグリーンが接していた。ティーグランドから見ると色の違いこそあれ一つのグリーンに見えたはず。このようなベント・コウライが接していたホールは、15番のほか、13番(パー4)、18番(パー5)などで、コウライのベント化でははっきりとセパレートすることがテーマとなった。
15番ホールを例にとるとコウライグリーンを右斜め前方に移設。二つのグリーンの間を広げた。以前には、Pグリーン使用時にコウライグリーンにオンしたボールはグリーン外からアプローチをするルールだったが、そのままパターで打つケースが多かった。完全にセパレートされたことでそれは無くなったという。
新グリーンの芝はコース管理側とも検討し、クリーピングベントグラス・T1に決定した。倉上氏は「最近のベントグリーン改造によく使用されている種子で、グリーンキーパーからの要望と、以前改造に使用した袖ヶ浦CC新袖コースでの結果が良かったので使用した訳です」と語る。この選択は好結果となった。
ところで、本厚木CCの特色としてバンカーの少なさが挙げられる。赤星四郎氏の意図からか18ホールで僅か59カ所しかない。倉上氏もその意向を尊重して一切バンカーは増やさなかった。それはあくまで赤星イズムの継承「極端に各ホールの難易度を上げない」ということだった。
15番ホールの工事を進めていた時「ガードバンカーを造ったらどうか」という声もあがった。丁度、赤星マインドの象徴ともいえるマウンドの移設に取りかかっていた時だった。「このパー3はレギュラーティーで184ヤード(バックは208ヤード)であり、グリーンのアンジュレーションも厳しくかなり難しい」
理由を聞けば「難しくしたい」ということだが、「これ以上難しくすることは戦略性を損ねる」と説明して納得してもらったという。
納得のいく難しさとは何か。これは設計者の永遠の命題であろう。
バンカーの新設より重要なテーマは、赤星マウンドの移設だった。赤星マウンドは元のコウライグリーンの右手前にあった。コウライグリーンをPグリーンとセパレートし、右斜め前方に移設するとマウンドが消えてしまう。「赤星さんのマインドがそこにある」と感じた倉上氏はTグリーン(新ベントグリーン)後ろの右サイドにマウンドを移設した。
このマウンド移設に要する労力、時間を考慮すると何もマウンド一つに……と考えたくもなるが、それが赤星四郎氏の絵の修復をまかされた倉上氏の誇りと責任と見ると、この改造全体の象徴といえる話ではないか。

なによりも大切な現場主義。設計者は土、風の声を聴け

15番のマウンドの移設はTグリーン右奥の16番のティーを隠す意味もあった。この他にコウライグリーンのベント化と同時に、新しく送水管とスプリンクラーの敷設工事も行った。またゴルファーが自然の景観を楽しみながらプレーできるような取り組みに加え、コース改造では各ホールの距離を正確に計測した。工事に当たって何よりのポイントは、営業しながら進めることであった。
「早朝及び午後2時以降に進めました。週に少なくとも三、四度は現場に足を運び現場で指示をしました」と倉上氏。
図面上の指示ではない。現場に入り、リアルタイムでイメージと工事作業をリンクする。赤星マウンドの移設もこうしたことから生かされたと言えるだろう。
「現場に入って足を踏みしめ、風を感じなければコースの手直しなど出来ないと多くの設計家は語っている。四季折々の花木についてもその場でなければ感じられない。本厚木CCは例えば4番ティ左サイドのクヌギ林など、武蔵野の面影を残す樹影が濃い。他にケヤキ、モミジ、クヌギ、ナラ、エゴノキ、シイ、レンギョウ、ハナズオウ、ハナミズキ、モクレン、ヤマボウシ、コブシ、サルスベリ、シダレザクラ、ヤマザクラ、ソメイヨシノ、ウメ、タイサンボク、柳、赤松、黒松、メタセコイヤ、アジサイなど年間を通してプレーヤーの眼を楽しませてくれ、戦略的にもポイントなるものを残しました」と振り返る。
送水管敷設とスプリンクラー工事も同時に行いTグリーンの新設工事と共にバンカー内の排水手直しも留意し、暗渠排水管を新たに敷設、排水面での改良を進めている。
本厚木CCの改造工事は7年前に行われている。改造後2007年6月の竣工検査を経て、10月4日にJGA新コースレートを取得している。Pグリーンで72.0、Tグリーンで70.2と予定した通りとなり、テーマであった正確な距離測定も満足できる結果になったと言える。やはりコース改造は、名のある原設計者の場合には、いかにその意向を考慮しつつ、現代のゴルフにマッチさせるか、それにはゴルフの歴史、文化に通じた人材の登用が何より。哲学を持ったコース設計者が必要ということを、本厚木CCの例は教えてくれた。

(文責・井口 紳)

 

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